$p$ 進Hodge理論1.3

https://math.stanford.edu/~conrad/papers/notes.pdf

1.3 $p$ 進Hodge理論の目標
定義($p$進体)
$p$ 進体とは、標数0の完備離散付値体 $K$ で剰余体 $k$ が標数 $p>0$ の完全体であるもののことをいう。
 
 $p$ 進体 $K$ に対する $G_K$ の $p$ 進表現の多くの性質は惰性群 $I_K$ に現れます。そこで、$K$ を $\widehat{K^{\rm un}}$ で置き換えることで $G_K$ を $G_\widehat{K^{\rm un}}=G_{K^{\rm un}}=I_K$ に、$k$ を $\overline{k}$ に置き換えて考えることがよくあります。
 
 $p$ 進Hodge理論の目標は、$p$ 進体 $K$ に対する$G_K$ の「良い」クラスの  $p$ 進表現、特に代数幾何から現れるものを調べることです。
 
二つの例を見ていきます。
 
例1 スムースで固有な $\mathbb{C}$ 上のスキーム $Z$に対し、Hodge分解
\[\mathbb{C}\otimes_{\mathbb{Q}}H^n_{{\rm top}}(Z(\mathbb{C}),\mathbb{Q})\cong \bigoplus_{p+q=n}H^p(Z,\Omega^q_Z)\]
が存在することが知られています。これの $p$ 進類似として、スムースで固有な $K$ 上のスキーム $X$ に対し、$p$ 進表現 $H^n_{{\rm et}}(X_{\overline{K}},\mathbb{Z}_p)$ とHodgeコホモロジー $\oplus_{p+q=n}H^p(X,\Omega_{X/K}^q)$ の関係を知りたくなります。これはのちにHodge Tate表現の理論を使って調べられます。
 
例2 $p$ 進体 $K$ および無限分岐の代数拡大 $K_\infty/K$ で、Galois閉包 $K_\infty'/K$ のGalois群 ${\rm Gal}(K_\infty'/K)$ が $p$ 進Lie群であるようなものを考えます(たとえば $K_\infty=K_\infty'=K(\mu_{p^\infty})$)。FontaineとWintenbergerは、$K_\infty$ の分離代数拡大の圏と、$K_\infty/K$ に付随した標数 $p$ の"field of norms" $E$の分離代数拡大の圏が同値であることを示しました。さらに、$K_\infty$ の分離閉包を一つ固定すると、それに付随して $E$ の分離閉包および同型
\[G_{K_\infty}\cong G_E\]
が定まります。このように、無限分岐した標数 $0$ の体と、標数 $p$ のDVFのGalois群が自然に同型であるというのは非常に興味深い事実です。のちに $K_\infty=K(\mu_{p^\infty})$ の場合に限って詳しく見ていきます。
 
次回に続く