$p$ 進Hodge理論3.1
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3.1 $p$ ねじれ表現
この章では、標数 $p>0$ の任意の体 $E$ に対して $G_E$ の $p$ 進表現を考えます*1。まず $G_E$ の $\mathbb{F}_p$ 表現、そしてねじれ $\mathbb{Z}_p$ 表現を考え、最後に一般の $\mathbb{Z}_p$ 表現を考えます*2。
まず最初に述べた通り、有限次元 $\mathbb{F}_p$ ベクトル空間 $V_0$ 上の $G_E$ の連続*3表現の圏 ${\rm Rep}_{\mathbb{F}_p}(G_E)$ を考えます。ここでは $E_s$ が$\S 2.4$における $B_{\rm HT}$ の役割を担います。$E_s$ には $G_E$ の作用と自己準同型 $\varphi_{E_s}:E_s\to E_s;\ x\mapsto x^p$ という二つの構造があります。これらは $B_{\rm HT}$ の $G_K$ 作用と次数付けに対応しており、$B_{\rm HT}^{G_K}=K$ と ${\rm gr}^0(B_{\rm HT})=\mathbb{C}_K$ という性質には $E_s^{G_E}=E,\ E_s^{\varphi_{E_s}=1}=\mathbb{F}_p$ が対応しています。
$\S 2.4$ では $B_{\rm HT}$ を用いて ${\rm Rep}_{\mathbb{C}_K}(G_K)$ の Hodge-Tate 表現の圏と ${\rm Gr}_{K,f}$ の間の圏同値 $\underline{D},\underline{V}$ を構成しました。今回は $E_s$ を用いて ${\rm Rep}_{\mathbb{F}_p}(G_E)$ と以下の圏の間の圏同値を構成します。
$\Phi M_E^{\rm et}$ の対象 $(M_0,\varphi_{M_0})$ をよく $M_0$ と書きます。一番簡単な対象は $M_0=E,\ \varphi_{M_0}=\varphi_E$ で、これを $E$ と書きます。
$\Phi M_E^{\rm et}$ にはテンソル積が定まります。また $M_0\in \Phi M_E^{\rm et}$ の双対も、$(M_0^\vee,\varphi_{M_0^\vee})$ の組で、$\varphi_{M_0^\vee}:M_0^\vee\to M_0^\vee$ は $\ell:M_0\to E$ を $\varphi_E^*(\ell):\varphi_E^*(M_0)\to E;\ c\otimes m\mapsto c\ell(m)^p=c\varphi_E(\ell(m))$ と($\varphi_{M_0}$ から誘導された)同型 $M_0\cong \varphi_E^*(M_0)$ の合成に移すようなものとして定まります。このとき、$M_0^{\vee\vee}\cong M_0$ は $\Phi M_E^{\rm et}$ での同型で、また $M_0\otimes M_0^\vee\to E$ は $\Phi M_E^{\rm et}$ の射になります。
証明 可換図式
から、$\varphi_E^*(h),h$ の核、余核、像の間の同型が誘導される。核、余核、像の構成は係数体の拡大と可換だから、étalenessが得られる。 (証明終わり)
$E_s$ を使って以下の関手を定義します。
$M_0\in \Phi M_E^{\rm et}$ に対し、${\rm V}_E(M_0)$ を $\mathbb{F}_p$ ベクトル空間 $(E_s\otimes_E M_0)^{\varphi=1}$ に $G_E \curvearrowright E_s$ から誘導された $G_E$ 作用が付随したものとする。ここで、$\varphi:=\varphi_{E_s}\otimes \varphi_{M_0}$ である。
自明な例として、${\rm D}_E(\mathbb{F}_p)=E$ とその自己準同型 $\varphi_E$、${\rm V}_E(E)=\mathbb{F}_p$ とその自明な $G_E$ 作用があります。
また、これらの関手の反変バージョン ${\rm D}_E^*,{\rm V}_E^*$ を使うこともあります(それぞれ最右辺との同型がある):
\begin{align}{\rm D}_E^*(V_0)&:={\rm D}_E(V_0^\vee)\cong {\rm Hom}_{\mathbb{F}_p[G_E]}(V_0,E_s), \cr {\rm V}_E^*(M_0)&:={\rm V}_E(M_0^\vee)\cong {\rm Hom}_{E,\varphi}(M_0,E_s).\end{align}
$M_0\in \Phi M_E^{\rm et}$ に対し、$\mathbb{F}_p$ ベクトル空間 ${\rm V}_E(M_0)$ の次元は $\dim_E M_0$ 以下である。特に、${\rm V}_E(M_0)$ は ${\rm Rep}_{\mathbb{F}_p}(G_E)$ に入る。
略証 Galois descent(2.4(1))により、$E_s$ の掛け算で誘導される $E_s$ 線形 $G_E$ 同変写像
\[E_s\otimes_E D_E(V_0)=E_s\otimes_E(E_s\otimes_{\mathbb{F}_p}V_0)^{G_E}\to E_s\otimes_{\mathbb{F}_p}V_0\quad (1)\]
は同型となる。特に、 $\dim_E{\rm D}_E(V_0)=\dim_{\mathbb{F}_p} V_0$ である。さらにこれは両辺のFrobenius自己準同型を保つことが分かる。これにより、$\varphi_{{\rm D}_E(V_0)}$ の $E$ 線形化が同型であることが、$E_s\otimes _{\mathbb{F}_p}V_0$ の自己準同型 $\varphi_{E_s}\otimes 1$ の $E_s$ 線形化が同型であることと同値になる。ここで$\varphi_{E_s}\otimes 1$ の $E_s$ 線形化は
\[\varphi_{E_s}^*(E_s\otimes _{\mathbb{F}_p}V_0)\cong E_s\otimes _{\mathbb{F}_p}V_0\xrightarrow{\mathrm{id}}E_s\otimes _{\mathbb{F}_p}V_0\]
であるから同型である。
$V_E(M_0)$ についての主張は、$E_s$ の掛け算で誘導される $E_s$ 線形 $G_E$ 同変写像
\[E_s\otimes_{\mathbb{F}_p}V_E(M_0)=E_s\otimes_{\mathbb{F}_p}(E_s\otimes_E M_0)^{\varphi=1}\to E_s\otimes_E M_0\quad (2)\]
が単射であることを示すことで証明される(左辺から線形独立な$E_s$ベクトルの組をとってきて、送った先も線形独立であることを示す)。 (証明終わり)
この補題によって、共変関手 ${\rm D}_E:{\rm Rep}_{\mathbb{F}_p}(G_E)\to \Phi M_E^{\rm et}$ および ${\rm V}_E:\Phi M_E^{\rm et}\to {\rm Rep}_{\mathbb{F}_p}(G_E)$ が得られ、${\rm D}_E$ はランクを保存することが分かります。また、
\[(E_s\otimes_{\mathbb{F}_p}V_0)^{\varphi=1}=E_s^{\varphi=1}\otimes_{\mathbb{F}_p}V_0=V_0,\]
\[ (E_s\otimes_E M_0)^{G_E}=E_s^{G_E}\otimes_E M_0=M_0\]
となるので、(1)のFrobenius不変部分および(2)の$G_E$-不変部分をとることで、同型 $V_E(D_E(V_0))\to V_0$ および単射 $D_E(V_E(M_0))\to M_0$ が得られます。さらに、次が成り立ちます。
$D_E(V_E(M_0))\to M_0$ の全射性を示すには、同型
\[V_E(M_0)\cong \mathrm{Hom}_{E,\varphi}(M_0^\land,E_s)\cong \mathrm{Hom}_{E\mathrm{-alg}}(A,E_s)\]
($A=E[X_1,\cdots,X_d]/(X_j^p-\sum_ic_{ij}X_i)_{1\leq j\leq d}$とおいた)が得られ、$\#V_E(M_0)=\dim_EA=p^{\dim_E M_0}$ となることを示します。
次回に続く
*1:分離閉包 $E_s$ を一つ固定して $G_E={\rm Gal}(E_s/E)$ とおく。
*2:$p$進Hodge理論1.2 - Cat76599648の勉強日誌
の補題によって $\mathbb{Q}_p$ 表現も分かる。
*3:$G_E$ の $V_0$ への作用が、$E_s$ に含まれる有限次 Galois 拡大 $E'/E$ に対して ${\rm Gal}(E'/E)$ の作用に factor するということ。
*4:$\varphi_E=\varphi_{E_s}|_E$ で、$\varphi_E^*(M_0)$ は係数拡大 $E\otimes_{\varphi_E,E}M_0$ にテンソルの左側への積で $E$ ベクトル空間の構造を入れたもの。$\varphi_{M_0}$ の $E$ 線形化は $\varphi_E^*(M_0)\to M_0;\ c\otimes m \mapsto c\varphi_{M_0}(m)$ という写像。
*5:étaleという用語が使われているのは、標数 $p>0$ の体 $k$ 上局所有限型スキーム $X$ がétaleになることと、$k$ 上の相対 Frobenius 写像 $F_{X/k}:X\to X^{(p)}=k\otimes_{\varphi_k,k} X$ が同型であることが同値だから。
*6:$\varphi_{E_s}$ は $G_E$ 作用と compatible だからこれは well-defined。
$p$ 進Hodge理論2.4(2)
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前回定義した $\underline{D}$ を調べる上で、次の「周期環」が重要になります。
\[B_{\rm HT}=\bigoplus_q\mathbb{C}_K(q)\]
を $K$ の Hodge-Tate 環という*1。積構造は同型 $\mathbb{C}_K(q)\otimes_{\mathbb{C}_K}\mathbb{C}_K(q')\cong\mathbb{C}_K(q+q')$ によって入れる。
\[\underline{V}(\underline{D}(W) )={\rm gr}^0(B_{\rm HT}\otimes_K \underline{D}(W))\overset{\gamma_W}{\cong}{\rm gr}^0(B_{\rm HT})\otimes_{\mathbb{C}_K} W=W\]
が成り立つ。
$W,W'\in {\rm Rep}_{\mathbb{C}_K}(G_K)$ に対し、 $B_{\rm HT}$ の積で定まる $G_K$ 同変写像
\[(B_{\rm HT}\otimes_{\mathbb{C}_K} W)\otimes_{\mathbb{C}_K}(B_{\rm HT}\otimes_{\mathbb{C}_K} W')\to B_{\rm HT}\otimes_{\mathbb{C}_K}(W\otimes_{\mathbb{C}_K} W')\]
から誘導された ${\rm Gr}_K$ の写像
\[\underline{D}(W)\otimes\underline{D}(W')\to \underline{D}(W\otimes W')\]
は、$W$ と $W'$ が Hodge-Tate なら同型である。同様に、 $W$ が Hodge-Tate なら ${\rm Gr}_K$ の写像
\[\underline{D}(W)\otimes_K\underline{D}(W^\vee)\to \underline{D}(W\otimes W^\vee)\to \underline{D}(\mathbb{C}_K)=K\langle 0\rangle\]
は(各 $q$ に対する $W\{q\}$ と $W^\vee\{-q\}$ の間の)perfect pairing である。したがって、誘導される ${\rm Gr}_{K,f}$ の写像 $\underline{D}(W^\vee)\to \underline{D}(W)^\vee$ は同型である。
つまり、$\underline{D}$ は Hodge-Tate 表現上のテンソル積および双対とcompatibleである。同様のcompatibilityは $\underline{V}$ に対しても成り立つ。
\[D_{\rm HT}(V)=\underline{D}_K(\mathbb{C}_K\otimes_{\mathbb{Q}_p} V)=(B_{\rm HT}\otimes_{\mathbb{Q}_p} V)^{G_K}\]
で定める。
次回に続く
*1:$B$ はBarsottiの頭文字。
*2:積は次数に関して加法的で、$G_K$ 作用は次数および環構造を保つ。また、$G_K$ 作用は $\mathbb{C}_K$ 上半線形。
*3:次数付けは $B_{\rm HT}$ から誘導される。
*4:$D\in {\rm Gr}_{K,f}$ より、ほとんどすべての $q$ に対して $D_q=0$ であり $D_q$ はすべて $K$ 上有限次元であることに注意。
*5:$B_{\rm HT}$ と $W$ から誘導される。
*6:$B_{\rm HT}$ と $\underline{D}(W)$ から誘導される。
*7:https://cat76599648.hatenablog.com/entry/2024/03/19/042633
*8:$\mathbb{C}_K\otimes_{\mathbb{Q}_p} V$ が ${\rm Rep}_{\mathbb{C}_K}(G_K)$ の Hodge-Tate 表現
*9:拡大に関しては閉じていない。
$p$ 進Hodge理論2.4(1)
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2.4 Hodge-Tate表現のフォーマリズム
${\rm Rep}_{\mathbb{C}_K}(G_K)$ において
\[\left(\bigoplus_q\mathbb{C}_K(-q)^{h_q}\right)\otimes_{\mathbb{C}_K} \left(\bigoplus_{q'}\mathbb{C}_K(-q')^{h'_{q'}}\right)\cong \bigoplus_r\mathbb{C}_K(-r)^{\sum_ih_ih'_{r-i}}\]
なので、$W,W'$ が Hodge-Tate なら $W\otimes W'$ も Hodge-Tate になります。同様に、$W\oplus W'$ も Hodge-Tate になります。
Hodge-Tate 表現とテンソル積などの演算がどのように関係しているかを表すために、まず次の定義をします。
\[\underline{D}(W)=\bigoplus_q W\{q\}=\bigoplus_q (\mathbb{C}_K(q)\otimes_{\mathbb{C}_K} W)^{G_K}\]
で定める。
\[0\to \underline{D}(W')\to\underline{D}(W)\to \underline{D}(W'')\to 0\]
は ${\rm Gr}_{K,f}$ での完全列である(したがって Hodge-Tate weight は Hodge-Tate 表現の完全列に関して加法的になる)。
したがって、$W\in {\rm Rep}_{\mathbb{C}_K}(G_K)$ が Hodge-Tate であることと、それを ${\rm Rep}_{\mathbb{C}_K}(G_{K'})$ の対象だと思ったときに Hodge-Tate であることは同値である。
*1:Silverman, The Arithmetic of Elliptic Curves, II, 5.8.1
$p$ 進Hodge理論2.3
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2.3 Hodge-Tate分解
以下に述べるSerreとTateの補題は、Tate-Senの定理とともに非常に重要なものです。
$W\in {\rm Rep}_{\mathbb{C}_K}(G_K)$ と $q\in \mathbb{Z}$ に対し、$K$ ベクトル空間
\[W\{q\}:=W(q)^{G_K}\cong \{w\in W\mid g(w)=\chi(g)^{-q}w\quad (\forall g\in G_K)\}\]
を考えます*1。これは $q\ne 0$ のとき $\mathbb{C}_K$ ベクトル空間ではないことに注意します*2。
\[K(-q)\otimes_K W\{q\}\hookrightarrow K(-q)\otimes_K W(q)\cong W\]
が得られます。さらに $\mathbb{C}_K$ をテンソルすることで
\[\mathbb{C}_K(-q)\otimes_K W\{q\}\to W\]
が得られます。
\[\xi_W:\bigoplus_q(\mathbb{C}_K(-q)\otimes_K W\{q\})\to W\]
は単射である。特に、有限個を除くすべての $q$ に対し $W\{q\}=0$ であり、 $\dim _KW\{q\}<\infty\quad (\forall q),\quad \sum_q\dim_KW\{q\}\leq \dim_{\mathbb{C}_K}W$ となる。等号が成立するのは $\xi_W$ が同型であることと同値である。
$W$ が Hodge-Tate のとき、$h_q=\dim_K W\{q\}$ とおくと $W$ はnon-canonical に$\bigoplus \mathbb{C}_K(-q)^{h_q}$ と同型になります。逆に、$W\in {\rm Rep}_{\mathbb{C}_K}(G_K)$ に対し分解 $W\cong \bigoplus \mathbb{C}_K(-q)^{h_q}$ があるとき($h_q\geq 0$ かつほとんどすべての $q$ は $0$)、Tate-Sen の定理から $\dim_K W\{q\}=h_q$ であって、$\sum_q\dim_K W\{q\}=\sum_qh_q=\dim_{\mathbb{C}_K}W$ となるため $W$ は Hodge-Tate です。つまり、Hodge-Tate という性質は $\mathbb{C}_K(r_i)$ の有限個の直和に同型という性質に言い換えることもできます。特に、$W$ がHodge-Tate なら $W^\vee$ も Hodge-Tate です。
特にスムースで固有な $K$ 上のスキーム $X$ に対して $W=\mathbb{C}_K\otimes_{\mathbb{Q}_p}H^n(X_{\overline{K}},\mathbb{Q}_p)$ とおくと、Faltingsの定理より $W\{q\}$ は $H^{n-q}(X,\Omega^q_{X/K})$ とcanonicalに $K$ 同型になります。
$W$ がHodge-Tateのとき、$h_q>0$ なる $h_q$ を $W$ のHodge-Tate weightと言います。$q\in\mathbb{Z}$ が $W$ のHodge-Tate wightであるのはちょうど単射 $\mathbb{C}_K(-q)\hookrightarrow W$ があるときになります。
次回に続く
*1:同型の左辺は $W(q)$ の部分空間、右辺は $W$ の部分空間であり、同型は $\mathbb{Z}_p(1)$ 基底の取り方によることに注意。したがって $W\{q\}$ はnon-canonicalに $W$ の $K$ 部分空間となる。
*2:$0\ne cx\in W\{q\}\quad (\forall c\in\mathbb{C}_K)$ とすると任意の $g\in G_K$ に対し $g(c)x=cx$ より $g(c)=c$ となり、$c\in \overline{K}^{G_K}=K$ となるが $K\subsetneq \mathbb{C}_K$ であるため矛盾。
*3:$\xi_W$ は $\mathbb{C}_K$ 線形であり、また $\mathbb{C}_K^\times$ 倍しても長さは変わらないので $c_1=1$ としてよい。
$p$進Hodge理論2.2
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2.2 Tate-SenとFaltingsの定理
$X$ を $p$ 進体 $K$ 上のスムースで固有なスキームとします。$G_K$ の $p$ 進表現 $H^n_{{\rm et}}(X_\overline{K},\mathbb{Q}_p)$ は調べるのが難しいですが、
\[V\leadsto \mathbb{C}_K\otimes_{\mathbb{Q}_p} V\]
という操作をかませると簡単になることをTateは発見しました。
そこで次の定義をします。
\[\mathbb{C}_K\otimes_{\mathbb{Q}_p}H^n_{{\rm et}}(X_\overline{K},\mathbb{Q}_p)\cong \bigoplus_q (\mathbb{C}_K(-q)\otimes_K H^{n-q}(X,\Omega_{X/K}^q)).\]
特に、$h^{p,q}=\dim_K H^p(X,\Omega_{X/K}^q)$ とおくと、non-canonicalに
\[\mathbb{C}_K\otimes_{\mathbb{Q}_p}H^n_{{\rm et}}(X_\overline{K},\mathbb{Q}_p)\cong \bigoplus_q \mathbb{C}_K(-q)^{h^{n-q,q}}\]
が成り立つ。
これによって、$\mathbb{C}_K\otimes_{\mathbb{Q}_p}H^n_{{\rm et}}(X_\overline{K},\mathbb{Q}_p)$ は $\mathbb{C}_K(-q)$ という非常に簡単な $\mathbb{C}_K$ 表現の直和になっていることが分かります。また、後でみるように $K$ ベクトル空間 $H^{n-q}(X,\Omega_{X/K}^q)$ を $\mathbb{C}_K\otimes_{\mathbb{Q}_p}H^n_{{\rm et}}(X_\overline{K},\mathbb{Q}_p)$ から復元することもできます。ただし、$p$ 進表現 $H^n_{{\rm et}}(X_\overline{K},\mathbb{Q}_p)$ そのものを復元することはできないことに注意が必要です。一般に、$\mathbb{C}_K\otimes_{\mathbb{Q}_p}V$ は $V$ の情報をかなり失います。例えば、split multiplicative reduction をもつ $K$ 上の楕円曲線 $E$ に対し、${\rm Rep}_{\overline{K}}(G_K)$ においてnon-split な完全列
\[0\to \overline{K}(1)\to\overline{K}\otimes_{\mathbb{Q}_p}V_p(E)\to\overline{K}\to 0\]
があります。これに $\mathbb{C}_K$ をテンソルすると ${\rm Rep}_{\mathbb{C}_K}(G_K)$ において(一意に)splitする完全列が得られます。これはTate-Senの定理の2つ目の部分ですが、まずその定理を述べるために次の定義をします。
$ \eta :G_K\to \mathbb{Z}_p$ を連続指標とします。$H^1_{{\rm cont}}(G_K,\mathbb{C}_K(\eta))$ *3は ${\rm Rep}_{\mathbb{C}_K}(G_K)$ での拡大
\[0\to\mathbb{C}_K(\eta)\to W\to \mathbb{C}_K\to 0\quad (1)\]
の同型類と同一視されます:$\mathbb{C}_K(\eta),\mathbb{C}_K$ からきた $W$ の基底を一つ固定して$G_K$ 表現 $W$ を行列
\[\begin{pmatrix}\eta&*\\0&1\end{pmatrix}\]
で表すと、右上の成分が $G_K$ 上の $\mathbb{C}_K(\eta)$ 値連続1-cocycleになることが分かります。また、基底の取り方を変えると1-cocyleは1-coboundaryの分だけ変わります。逆に、1-cocyleからこのような拡大 $W$ を(同型を除いて)作ることもできます。
\begin{align}\mathbb{C}_K(r)^{G_K}=\begin{cases} K\quad (r=0)\cr \ 0\quad (r\ne0)\end{cases}.\end{align}
また、$H^1_{\rm cont}(G_K,\mathbb{C}_K(r))$ は $r\ne0$ なら $0$ で、$r=0$ なら $K$ 上 $1$ 次元となる。
より一般に、$\eta:G_K\to \mathscr{O}_K^\times$ を $\eta(G_K)$ が高々 $1$ 次元の可換 $p$ 進Lie群*4であるような連続指標としたとき、$\eta(I_K)$ が無限群のときは $H^i_{{\rm cont}}(G_K,\mathbb{C}_K(\eta))=0\quad (i=0,1)$ で、有限群のときこれらのコホモロジー群は $K$ 上 $1$ 次元となる。
これによって、完全列 $(1)$ は(一意的に)splitすることが分かります。
$p$ 進Hodge理論2.1
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2.1 $\mathbb{C}_K$ の基本性質
以降、$K$ は $p$ 進体とし、その代数閉包を一つ固定して$\overline{K}$ と書きます。また、${\rm Gal}(\overline{K}/K)$ を $G_K$ と書き、$K$ 上の絶対値 $|\,\cdot\,|$ を $\overline{K}$ に延長したもの*1による完備化 $\widehat{\overline{K}}$ を $\mathbb{C}_K$ と書きます。${\rm ord}_K:=\log_p |\cdot|, {\rm ord}_K(0):=\infty$ とし、これと $|\,\cdot\,|$ を $\mathbb{C}_K$ に延長したものも $|\,\cdot\,|,{\rm ord}_K$ と書きます。${\rm ord}_K(p)=1$ となるように正規化することもよくあります。
歴史的に一番はじめの「良い」クラスの $G_K$ の $p$ 進表現はHodge-Tate表現と呼ばれるもので、これからしばらくそれを見ていきたいと思います。
まず一番基本的なものとして、1.1の $p$ 進円分指標があります。それについて少し説明します。${\rm GL}_1$ の $K$ 上の $p$ 進Tate加群は $\varprojlim \mu_{p^n}(\overline{K})$ で、階数$1$の自由 $\mathbb{Z}_p$ 加群です。これを $\mathbb{Z}_p(1)$ と書きます。これの基底を選ぶことは、原始 $p^n$ 乗根のcomaptible system $(\zeta_{p^n})_{n\geq 1}$ をとることに相当します(もちろんcanonicalな基底は存在しません)。$\mathbb{Z}_p(1)$ には円分指標 $\chi$ によって $G_K$ が作用します。そこで $\mathbb{Z}_p(1)$ の基底を一つ固定して、$\mathbb{Z}_p(1)$ を $\chi$ による $G_K$ 作用が入った $\mathbb{Z}_p$ とみなすことがよくあります。
$r\in \mathbb{Z}_{\geq 0}$ に対して、$\mathbb{Z}_p(r)=\mathbb{Z}_p(1)^{\otimes r},\ \mathbb{Z}_p(-r)=\mathbb{Z}_p(r)^\vee$ と定め*2、また$\mathbb{Z}_p[G_K]$ 加群 $ M $ に対して $M(r):=M\otimes_{\mathbb{Z}_p}\mathbb{Z}_p(r)$ と定めます。$\mathbb{Z}_p(1)$ の基底を一つ固定すると、$M(r)$ は $ M $ に $G_K$ 作用
\[g.m=\chi(g)^rg(m)\quad (g\in G_K,m\in M)\]
が入ったものと同一視されます。
Hodge-Tate表現の理論では、$G_K$ の $p$ 進表現 $V$ に対して$\mathbb{C}_K\otimes_{\mathbb{Q}_p}V$ への $G_K$ 作用*3を考えることがあります。そこで、まず$\mathbb{C}_K$ の基本的な性質を2つ見ていきます。
証明 ($X$を適当に定数倍することで)
\[P=X^N+a_1X^{N-1}+\cdots+a_N\in \mathscr{O}_{\mathbb{C}_K}[X]\quad (N>0)\]
の根の存在を示せば良い。$\mathbb{C}_K=\widehat{\overline{K}}$ だから、$P$ に収束するモニック多項式 $P_n\in \mathscr{O}_{\overline{K}}[X]$ がとれる:$P-P_n\in p^{Nn}\mathscr{O}_{\mathbb{C}_K}[X]$。
$P_n$ の根 $\alpha_n$ は $\overline{K}$ の元だが、$P_n$ はモニックなので特に$ \alpha_n\in \mathscr{O}_{\overline{K}}$ である。
$P_{n+1}-P_n\in p^{Nn}\mathscr{O}_{\mathbb{C}_K}$ だから、$P_{n+1}(\alpha_n)\in p^{Nn}\mathscr{O}_{\mathbb{C}_K}$ となる。したがって$P_{n+1}$ の根を $\{\rho_i\}_{i=1}^N$ とおくと、
\[p^{Nn}\mid\prod_i(\alpha_n-\rho_i)\]
となり、ある $i$ について $p^n\mid \alpha_n-\rho_i$ となる。この $\rho_i$ を $\alpha_{n+1}$ とおく。これを繰り返すと $\mathscr{O}_\overline{K}$ のCauchy列 $\{\alpha_n\}$ で $\forall n,\ P_n(\alpha_n)=0$ を満たすものがとれる。$\alpha\in \mathscr{O}_{\mathbb{C}_K}$ をその極限とすると、$P_n(\alpha_n)\rightarrow P(\alpha)$ より $P(\alpha)=0$ となる。
(証明終わり)
$G_K={\rm Gal}(\overline{K}/K)$ の $\overline{K}$ への作用はisometry*4だから、$\mathbb{C}_K=\widehat{\overline{K}}$ への作用に一意に延長され、$G_K$ は $K$ 上の $\mathbb{C}_K$ のisometricな自己同型の群と同一視されます。
証明 $x\in\mathbb{C}_K^H$ とする。$\overline{K}$ の点列$\{x_n\}$ で $v(x-x_n)\geq n$ なるものをとる。$g\in H$ に対し $g$ はisometryだから
\begin{align}v(g(x_n)-x_n)&=v(g(x_n-x)-(x_n-x))\cr&\geq \min \{v(g(x_n-x)),v(x_n-x)\}\cr&=v(x_n-x)\geq n\end{align}
となる。ここで、
\[v(x_n-y_n)\geq \min_{g\in H} \{v(g(x_n)-x_n)\}-\frac{p}{(p-1)^2}\geq n-\frac{p}{(p-1)^2}\]
なる $y_n\in \overline{K}^H$ が存在する*5。$x_n\rightarrow x$ だから $y_n\rightarrow x$ である。よって $x\in \widehat{\overline{K}^H}$である。(証明終わり)
次回に続く
$p$ 進Hodge理論1.3
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